ルノー ルーテシア R.S. シャシーカップ




 はじめに 

いつもの事なのであまり驚く人も少ないと思うのですが、約1年乗ったルノールーテシアRSシャシーカップを手放すことにしました。
このクルマで久々のサーキット走行に参加し、忘れかけていたモータースポーツへの情熱を呼び覚ませてくれました。
そんな思い出深いクルマについて、私なりに考察してみようと思います。

 ルノースポールのこだわり 

以前の記事でも紹介したのですが、ルノースポールがこのクルマにかける熱意は相当なもので、ベースモデルの生産ラインはトルコが主流なのですが、このモデルに関してはディエップ(フランス北西部)のアルピーヌ工場の専用ラインで組み立てられ、職人による専用チューンや手作業による塗装が施されています。
 エンジンについて 

心臓部のエンジンは、ベースこそ日産ジュークNISMO RSに搭載されるMR16DDTですが、ルノースポール独自の吸排気制御や、EDC(エフィシェント・デュアル・クラッチ)との組み合わせを考慮した専用チューン等を受けることで、ルノーM5Mエンジンへと生まれ変わります。

このエンジンは非常に完成度が高く、最大噴射圧150barの燃料供給装置を持つ直接噴射式で、わずか1,750rpmで最大トルクを発生し、その大トルクが5,600rpmまで持続する超ワイドトルクバンド特性を持っています。そのトルク特性はサーキット走行はもとより通常の市街地走行でも存分に発揮され、体感的には排気量2,800ccくらいの車に乗っているようでした。

耐久性に関しても抜かりはなく、排気温度が高くなりがちなターボ車という事もあり、排気バルブ(エキゾーストバルブ)には融点97.8℃の金属ナトリウム封入式を採用。さらにクランクシャフトには鍛造の4カウンターウェイト式を採用されています。

私の時代の車でナトリウム封入バルブと鍛造クランクシャフトと言えば、日産スカイラインGT-R等の一部のハイパフォーマンスカーにしか採用されていない憧れのパーツでした。

 トランスミッションについて 

前述のEDC(エフィシェント・デュアル・クラッチ)に関してもベースモデルとの差別化が図られており、ベースモデルでは0.29秒の変速タイムラグは0.2秒まで短縮され、さらにRSドライブボタンで「スポーツ」を選択すれば0.17秒に、「レース」を選択すれば最速の0.15秒にまで短縮されます。
※この0.15秒という変速スピードは、ポルシェケイマンのPDKの変速スピードに匹敵します。

私自身が街乗りやワインディングロードでも頻繁に使用していたのですが、このEDCにはマルチシフトダウン機能というものも搭載されています。この機能はRSドライブボタンで「スポーツ」以上を選択し、マニュアルモードを選択することで機能が有効になります。

活用シーンとしては、コーナーに進入しながら5速→4速→3速→2速といった具合に連続シフトダウンする場合、通常であれば複数回シフトダウン側のパドルを引く必要があるのですが、パドルを引いたままホールドすることにより、走行速度に応じたギアまで自動でシフトダウンしてくれます。

シフトダウンのスピードは恐ろしく速く、実際には複数回のブリッピングが行われているはずなのですが、ほぼ1回のブリッピング音にしか聞こえません。

 シャシー・サスペンションについて 

この強力なエンジンと高性能なトランスミッションを支えるシャシーにもルノースポール独自の工夫が施されており、サスペンション形式こそベースモデルと同じ「前ストラット/後トーションビーム」ですが、RSモデルは特にフロントを中心に強化されており、ショックアブソーバーの外径をφ48mmからφ50.8mm(シャシーカップ)へ2mm以上拡大しています。

さらにラリーフィールドで開発されたHCC(ハイドロニック・コンプレッション・コントロール)と言われる新技術も採用されており、路面追随性をより高めています。

路面追随性を高めるもう一つの工夫として、電子制御式デファレンシャルであるR.S.デフを採用。左右駆動輪のブレーキを使用した差動制限機構(トルクベクタリング)を搭載しています。

この機能は、コーナリング中にフロント内輪側にブレーキをかけることで相対的に外輪側の駆動力を大きくし、アンダーステアを抑制する効果があります。※とても魅力的な機能なのですが、RSドライブで「レース」を選択すると無効になります。

また、ステアリングについてもルノースポール専用設計となっており、ベースモデルでは15.4のステアリングギアレシオを14.4まで速めることで俊敏なステアリングレスポンスを実現しています。

 実オーナーとしての感想 

さすがルノースポール、走りに関しては何一つ死角がありません。が、実際にオーナーになってみると、BMW320dと同様気になる点も出てきます。

ほとんど走りに関係ない部分が多いのですが、毎日のように通勤で使用していると、やはりインテリアの質感が気になります。黒に近いグレーのプラスチックを多用した安っぽいインテリアで、正直国産のヴィッツやデミオの方が高級感があります。

それに毎日触るシフトノブにもクロームメッキ処理をしたプラスチックが多用されており、金属っぽいのに触ると加工跡やバリがあってインテリアの安っぽさを加速させています。

シフトノブ同様、ウインカーレバーに関しても、左折と右折で硬さが全然違い、右折時にはレバーが何かに引っかかっているかのように固く、レバーの戻りも悪いので、直進状態になる前に手動でレバーを戻していました。

それに、最近の輸入車としては珍しく、センターディスプレイが日本仕様へとローカライズされておらず、本国では使用できるナビゲーションシステムやRSモニターが使用できません。

メーター内のインフォメーションディスプレイに関しても同様で、すべて英語表記であることに加え燃費表示もkm/L(リッター○○km)ではなく、L/100km(100kmあたり○○リッター)と言う日本では馴染みのない表記になっています。

最低限の機能としてラジオとiPodやiPhoneをbluetoothやUSBケーブルで接続するタイプのオーディオ(表示名:マルチメディア)は使用できます。

しかし、このオーディオがまた曲者で、iPhone5Sをbluetooth接続して音楽を聴いていると、ペアリングできているのにブツブツと音楽が途切れ、USBケーブルで接続しても少し早いペースで曲送りをするとすぐにフリーズしてしまいます。

また、bluetoothを使用したハンズフリー通話に関しても、受信マイクが本国仕様と同じく助手席(本国では運転席)側についているため感度が非常に悪く、相手の声は聞こえるのにこちらの声がほとんど聞こえていないようです。

これらの問題点はディーラーの営業さんやメカニックにも相談しましたが、そう言う仕様とのことで相手にしてもらえませんでした。

ルノースポール専用ラインでの塗装の品質もお世辞にも良いものとは言えず、納車時から全体的にポリッシャーの線傷が付いているし、日本のPDIセンター(追浜PDI)で塗装を大幅に手直ししたらしく、計測したところ塗膜の厚さも均一ではありませんでした。

この点についてもディーラーの営業さんやメカニックにも相談しましたが、どうする事もできないとのことでした。塗装品質の低さに定評があるイタフラ車の典型です。

文句の付けようがないはずの走りに関しても少し不満がありました。

まずはルーテシア4から採用されたEDC(エフィシェント・デュアル・クラッチ)の制御です。

DCTなので仕様上仕方ないのかも知れませんが、特にオートマチックモードの発進時はモッサリしていて、急加速したい時もキックダウンに時間がかかりワンテンポ(体感的には1.5テンポくらい)ほど遅れて加速します。

RSドライブで「スポーツ」を選択すれば発進時の加速やギアチェンジも鋭くなるのですが、フツーの市街地走行でも各ギアを引っ張る(3,000rpm以上)ため、燃費を考えるとあまり多用はできません。

 まとめ 

個人的には気になる点も多々あって万人におすすめできるクルマではありませんが、走りを楽しむスポーツカーとしての性能は超一流で、このクラスの市販車でこのクルマを超える事はなかなか難しいのではないでしょうか。

以上、長編モノになりましたが特に印象に残った点をまとめてみました。

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